大判例

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東京地方裁判所 昭和60年(行ウ)212号

原告

鈴木緑

被告

中央労働基準監督署長村松孝一

右指定代理人

山田文夫

谷口悟

三橋幹雄

池野富夫

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が原告に対して昭和五八年五月三一日付けでした労働者災害補償保険法による休業補償給付を支給しない旨の処分(以下「本件不支給処分」という)を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は、昭和五四年七月一七日から同五六年六月一六日まで訴外株式会社キャリア(<住所略>)に雇用され、駅及びその周辺等で求人登録申込用ハガキ(以下「本件ハガキ」という。)を通行人に配布する業務に従事していたが、その間の同五五年一一月一八日、右手関節部に異常を覚え、同五六年五月三〇日、訴外日本通運株式会社健康保険組合東京病院(以下「日通病院」という。)で診察を受けたところ、右手関節炎と診断され、以後これの治療を受けた。

2  原告は被告に対し、昭和五八年五月二〇日、同五六年五月三〇日から同年八月三〇日までの間のうち一五日間日通病院において右手関節炎の病名で診断のため休業したのは業務に起因する疾病のためであるとして休業補償給付の請求をしたところ、被告は、同五八年五月三一日付けで原告の疾病は業務上の事由によるものとは認められないとして本件不支給処分をした。

そこで、原告は、そのころ、本件不支給処分を不服として東京労働者災害補償保険審査官に対し審査請求をしたところ、同審査官は、同年一一月一四日付けで右審査請求を棄却する旨の決定をした。

さらに原告は、同年一二月二二日、右棄却決定を不服として労働保険審査会に対し再審査請求をしたが、同審査会は、同六〇年九月一三日、右再審査請求を棄却するとの裁決をし、その裁決書謄本はそのころ原告に送付された。

3  しかしながら、本件不支給処分は原告の疾病について業務起因性を否定しているが、原告の疾病と本件ハガキ配布業務との間の相当因果関係は十分に肯定し得るから、本件不支給処分には右相当因果関係の存否についての事実誤認又は経験則違背の違法があるものである。すなわち、本件ハガキ配布業務は右手作業による反覆(ママ)継続作業であって、いきおい右手首に過度の負担がかかり、これを長期間継続することにより右手関節部の神経系、血管系にはもちろんのこと、全て軟部組織に損傷を与えることとなるのであって、特に冬期の寒冷に右手首を晒すと右損傷は一段と進行することとなるのである。

4  よって、原告は、本件不支給処分の取消しを求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1の事実中、原告の株式会社キャリアにおける雇用期間の占(ママ)いを除き、その余の点は認める。

原告の右会社における雇用期間は昭和五四年七月一六日から同五六年五月一六日までである。

2  同2の事実は認める。

3  同3は争う。

原告の疾病が業務上の事由によるものでないことは原告が本訴とその主張を同一にする東京地方裁判所昭和五九年(行ウ)第二二号療養補償給付不支給処分取消請求事件の判決理由からも明らかである。

第三証拠関係

本件記録中の書証目録、証人等目録記載のとおりである(略)。

理由

一  請求の原因1の事実中、原告の株式会社キャリアにおける雇用期間の点を除き、その余の点は当事者間に争いがなく、同2の事実は当事者間に争いがない。

(証拠略)によると、原告の右雇用期間は昭和五四年七月一六日から同五六年五月一五日までであることを認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

二  ところで、本件の争点は、原告の右手関節炎が本件ハガキ配布業務に起因するか否かにある。

当裁判所は、かつて原告が提起した当裁判所昭和五九年(行ウ)第二二号療養補償給付不支給処分取消請求事件につき、業務起因性が認められないとして請求棄却の判決言渡しをしたが、本訴は右言渡事件と争点を同一にするものであり、同事件で認定した事実は(証拠略)及び弁論の全趣旨を総合して認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠もないのであるから、同事件において判断したことは本訴についてもそのまま妥当するというべきである。

してみると、本件ハガキ配布業務が原告の右手関節炎を発症させた起因となったものと認めることはできないのであるから、被告が原告の疾病は業務上の事由によるものとは認められないとして本件不支給処分をしたことは正当であって、これを取消すべき理由はないというべきである。

よって、本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 林豊)

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